実際に妊娠していると言われないと、どんな気持ちになるかなんてわからなかった。

 あんなに不安なことばかりが頭を巡っていたのに、写真を見た瞬間、すべて消えてなくなる。
 この小さな命が愛おしい。なにがあっても、守りたい。その気持ちしかない。

 感情は昂ぶり、熱い涙が零れ落ちた。

「すみませっ……」

 恥ずかしい、先生の前なのに泣くなんて……。

 慌てて涙を拭うと、先生は首を左右に振った。

「わかります。……泣いてしまいますよね。自分の中に新しい命が宿ったのですから」

 優しい言葉とともに差し出されたティッシュ。

「ありがとうございます」

 受け取って涙を拭っても、なかなか止まってくれない。

「いいですよ、落ち着いてからお話いたしますね」

「……はい」

 それから血液検査などをして、先生から妊娠中に気をつけるべきことを聞き、看護師からは母子手帳交付に関して、次の通院日など事細かに説明を受けた。

「ありがとうございました」

 診察室を出ると、心配していた光美は私を見るなり駆け寄ってきた。そして神妙な面持ちで問う。

「ど、どうだった?」

 そんな光美にそっと「妊娠してた」と伝えると、彼女は目を丸くさせた後、みるみるうちに目が赤く染まっていく。