口づけが深くなるほど身体に力が入らなくなり、そろそろ自分の足で立っていられなくなりそう。

 それに気づいたのか、村瀬さんは最後に触れるだけのキスを落として唇を離した。

 お互いの息は上がっていて、玄関には吐息が漏れるだけ。
 すっかり暗闇に慣れた私の目に映るのは、村瀬さんの熱い瞳。

「肩、掴まって」

 そう言われるがまま彼の肩に手を置くと、素早く抱き抱えられた。

「きゃっ!?」

 器用に私が履いていたパンプスを脱がして家に上がり、廊下を突き進んでいく。
 その間も頬や額にキスを落とされ、ある部屋の前で足を止めた。

「寝室、ここ?」

「はい」って声が出なくて代わりに頷くと、村瀬さんはドアを開けて部屋に入り、静かに私をベッドに下ろした。

 そのままギシッと音を立てて私の上に覆い被さると、彼は早急にジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めていく。その動作にもドキドキしてしまう。

「さくら……」

 優しく頭を撫でられながら、唇が腫れるほど口づけを交わすとお互いの息は途切れ途切れになる。

 でも、もうキスだけでは足りなくなっていて、自ら彼の背中に腕を回してしがみついた。

「村瀬さん……」

 頬を摺り寄せると、身体をベッドに押し付けられ荒々しく唇を塞がれる。その間に村瀬さんの手は私の服を捲り、地肌を撫でていく。

「あっ……んんっ」

 抑えたくても抑えられない声が漏れて、羞恥心でいっぱいになる。

「好きだよ、さくら。……好きだ」

 何度も愛の言葉を囁きながら、宝物を扱うように村瀬さんは私に触れた。

 好きな人とする行為を、何度か経験してきた。もちろん緊張したし、幸せな気持ちにもなった。

 だけど村瀬さんとこうして肌を重ねていると、幸せすぎて泣きそうになる。こんなことは初めて。

 大好きな人のぬくもりに包まれて、私はこれ以上ない幸福感で満たされた。