極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

 おかずのどれがおいしかったとか、その日の天気とか、本当に些細なことしか話さない。

 知っている情報は、彼が村瀬さんだってことと、会社員だってこと。それと好きなおかずくらい。知らないことのほうが多い。

 だけど会話の端々から感じる優しさ。時折見せる笑顔。なにより同級生の男の子にはない大人の男性の魅力というのだろうか。

 仕草も言葉遣いも、着ているスーツに身につけている時計、どれもが彼が年上の大人の男性なのだと思い知らされる。
 彼のすべてに惹かれたのかもしれない。

 自分の気持ちに気づき、彼が勤め先の副社長と知ったのは、つい一ヵ月前のこと。

 弥生さんから噂の副社長の隠し撮りに成功した! と嬉しそうに見せてもらった写真がきっかけだった。

 他の社員と違い、食堂が職場の私は会社の重役たちとの接点など皆無だ。入社式も彼は出張中で欠席だったし、食堂に食べにくることもなければ、廊下ですれ違うこともない。

 大企業の御曹司で、ハイスペックな人である。弥生さんたちが話しているのを聞いて知っているだけの、雲の上のような存在だった。

 だからまさか夢にも思わないじゃない? そんな人がうちの弁当屋の常連になるなんて。