「今日デートに誘ったのは、最後にさくらちゃんと恋人がするようなデートをしたかったからなんだ。……夢のような一日を過ごして、キミのことをあきめるつもりだった」

 だった? あきらめるつもりじゃなくて?

 胸の鼓動が早鐘を打つ中、村瀬さんは真剣な瞳を私に向けた。

「今日一日、キミと一緒に過ごしてますます好きになった。どんなに努力したってこの先、さくらちゃんを忘れることなんてできないと思う」

 これは夢だろうか。そう思ってしまうほど信じられない。

「俺は、さくらちゃん以外の女性と結婚するつもりはない」

 思いがけないプロポーズに、息を呑む。

 嘘でしょ、だって、そんな……。

 村瀬さんに恋をしてから、何度プロポーズされることを夢見てきただろうか。そんな未来は絶対にやってこないと思っていたのに……。

 だけどすぐに早乙女さんの存在を思い出し、首を横に振った。

「待ってください、早乙女さんはどうするんですか?」

「え? 彩芽? どうしてさくらちゃんが彩芽を知っているの?」

 呼び捨てにするほど仲が良いんだ。そんな彼女と婚約したんだよね?

「それは社員食堂によく来てくれるからです。……そこで私、早乙女さんが村瀬さんと婚約すると同僚に話しているのを聞いたんです。それなのに、どうして私にプロポーズを……? 早乙女さんと結婚するんじゃないんですか?」

 気持ちは溢れ出し、止まらなくなる。