極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

「さて、と。店頭はさくらに任せてもいい? お父さんと明日の仕込みしちゃいたいから。あと三十分したら半額にしてね」

「わかったよ」

 厨房に向かうお母さんの背中を見送った後、人が行き交う街路へ目を向けた。

 商店街のみんなとは家族のような関係で、昔からなにかと可愛がってもらっている。

 幼い頃から店頭に立って手伝ってきた。それは社会人になってからも同じ。残業することはほとんどないから、閉店までこうして毎日手伝うことができている。

 両親には子供の頃から『手伝わなくてもいい、友達と遊んできていいんだよ』と言われ、大きくなるにつれて『無理していない?』なんて度々聞かれてきた。

 決して無理して手伝っているわけではない。ただ単に商店街の雰囲気も、ここで働く人たちすべてが好きだからだ。ここにいればみんなに会える。新たな出会いだってあるもの。

 商店街の中の店舗によっては、経営が難しく何件か店を畳んでしまったところもある。それでも商店街一丸となってお客さんを呼び込み、盛り上げるために様々なイベントを企画している。

 今のところどの店もうまくいっているようだけれど、それでも昔に比べたら客足は少なくなった。

 お父さんとお母さんはなにも言わないけれど、うちもギリギリだと思う。だから私に店を継がずに、働きに出ろってお父さんは言ったのかもしれない。