3月生まれの恋人〜Birthday present〜

玄関先で少しだけゆづが落ち着くのを待ってから
俺は、彼女を抱き上げてリビングへと足を運んだ。



『ごめんな、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったんだ』



ゆづを膝に載せて、ソファーに腰を降ろした俺は、彼女の髪をなでながら今日の一部始終をゆっくりと話して聞かせた


いつも通りに帰るつもりでいたこと

酔いが回って寝てしまったこと

携帯の電池がいつのまにか切れてしまっていたこと


俺の言葉に小さく頷きながら、ゆづはその細い指で涙を拭う



『目一杯叱られるつもりで帰って来たのにさ、泣きながら飛び出してくるから仰天したよ

だいたい、なんでゆづが泣くかな』



『だって………』



“心配だったんだもの”



ゆづの唇から漏れる涙の理由が嬉しくて、不謹慎ながら顔が綻ぶ



『もしかして、事故にあったんじゃ?とか思ってた?』


心配してもらえた嬉しさから調子に乗った馬鹿な俺は
満面の笑みでゆづに聞いた


『一瞬そんな事も考えたかな』



え?一瞬?

意外とも言える回答に、広がるのは次なる疑問



『じゃあ、一体なにを泣くほど心配してたわけ?』



『それは……』



急に言い淀む目の前のゆづ


『ゆづ?
全く見当つかないんだけど?』



顔を上げたゆづと目が会って
笑いながら問いかけた俺にゆづが言った



『私、重い…でしょ?

それで、柊、嫌になって逃げちゃったのかなって……』