3月生まれの恋人〜Birthday present〜

『ごめ……』



素直に詫びの言葉を口にしようとしたその時、突然パッと扉が開かれ中からゆづらしき女の子が飛び出してきた



『柊!』



思いがけない事態に、硬直する俺

ゆづの怒った顔ばかり想像しながら走ってきた帰り道

なのに何故?
部屋から飛び出してきたゆづは、ひっくひっくとしゃくりあげながら
俺の胸に顔を埋めて、その細い肩を震わせている

怒っているのではなく、泣いているのだということに気付き
俺は腕の中に飛び込んできたゆづをぎゅっと抱き締めた



『ごめん。
心配かけてごめん、ゆづ』



抱き締めて、その柔らかな髪にそっと触れる
薄手のシャツにゆづの暖かな涙が滲んで、広がっていくのがわかった



『連絡しなくてごめんな』



堪らないほどの愛しさが込み上げて、抱き締めた腕に力を込めた

泣かせるつもりはなかったんだ、ゆづ



『よか……った』



不意にこぼれ落ちた、聞き取れないくらいの小さな呟きに
ゆづの不安がいっぱい詰まっているようで、心が痛んだ