「ねえ母さん。今日は家にいる?」

「何、外で遊んだついでに連れ込もうって?」

「…あの、やめてくれる?多分、そういうことじゃないって思ってる上で、そう言ったんだろうけど」

「悪ふざけが過ぎました…。いるよ、じゃあどうして?」

「…アドバイスが欲しくて」

「アドバイス?」


俺は頷いた。


「俺さ、母さんが美容関係で働いてるってのに、オシャレとか何とかってのに疎くて。
どういうのが、女の子に良いなって思われるのか分からなくて」

「はあーん、なるほどぉー」


クセのある探偵みたいな反応をしてきた。
難解なトリックでも見破ったんですか?凄く楽しそうだけど。


「貴哉さ、普通ーにしてれば良いんじゃないかな」

「…うん、あのー、面倒なのかな?」

「違う違う。肌綺麗だし、髪のセットも上手いし、服装だって、無難っちゃ無難だけど…バランス良くコーディネートできてる。
親バカかもしれないけど、美容関係で20年以上やってる私からすれば、そう思うよ」

「母さん…」


そんな褒められると思ってもみなかった。
自分は、良くて普通だと思ってたから。


「じゃあ、いつも通りにしてみる。今日、お互い私服初めてだから、気にしちゃうっていうか」

「飛鳥ちゃんだっけ?彼女の私服も楽しみじゃん」

「…まだ彼女じゃないよ?」


そう返すと、母さんはキョトンとする。


「何言ってるの、sheって意味よ」

「あっ……」


早とちりしてしまったな。恥ずかし…。