あれはもう、間違いなく、年上の彼氏。
そりゃそうか。あんだけ小柄で可愛くて、大人っぽくて…。
しかも彼氏さんは、遠くてそんなにハッキリ見えるわけじゃないけど、イケメンの雰囲気がある。
まあ…飛鳥ちゃんなら、捕まえてもおかしくないよな。
…年下の俺なんか、眼中にあるわけない。
「…マジで言ってる?」
彼は少し困ったように言った。
そりゃそうだ。
年下のあんな可愛い彼女に、2人きりでカラオケに行こうなんて言われて、理性が揺らがないわけがない。
だけど大事にしたいから、それなら端からそういうシチュエーションを無くそう。
でもチャンスがあるなら…と思ってしまうオスの本能的な部分もチラつく。
その後の会話は途切れ途切れしか聞こえなかったけど、これだけは聞こえた。俺の耳に、ハッキリ聞こえた。
「わーい!カケル大好き!」
カクテルパーティ効果ってやつ?よく分かんないけど。
俺に関係あることだから、聞こえちゃった?
そのまま2人は、バイクに乗って行ってしまった。
飛鳥ちゃんは勿論、彼にギュッと抱きついて。
初恋は実らないって聞くけど、
どうやら本当に、そうかもしれない。
諦めないって、決めたばかりのはずなのに。



