ー貴哉sideーー
国語総合の授業が終わって、聖也と少し喋ってから学校を後にする。特に用事も無く、まっすぐ帰宅するつもり。
歩いていて、何となく飛鳥ちゃんの声がする。
ん?方向違うよね?
でも、もし飛鳥ちゃんだったら嬉しいな。
そんなことをほぼ反射的に考えて、声の方向に歩を進めてみる。
間違いじゃなかった。飛鳥ちゃんだ。後ろ姿でも分かる。思わず立ち止まって頬が緩んだ。
だけど。
見間違いであってほしかった。
「このまままっすぐ帰るの?」
「他に何か?どっか寄りたいの?」
一緒にいるのは、俺と同じくらいの背丈の大学生。軽い調子で喋っていて高校生に見えなくもないけど、しっかりしたバイクを持っているようで、大学生なんだろうな、と感覚的に感じた。
「カラオケ行きたいー、カケルの奢りで!ね?いいでしょ?かけるん、行こうよー!」
カケル…さん。
あんなに素直に甘えるんだ、飛鳥ちゃん。彼の腕を引っ張って、可愛く可愛く、おねだりする。
あんなんされたら、もうたまんないだろうな。傍から見てる俺ですらノックアウト寸前だっての。



