ああ…いた。
カッコつけて、バイクに寄りかかってポケットに手を突っ込んでいる。
私に気付くと、手を挙げてきた。
「よお」
「何カッコつけてんの」
「彼氏のいない飛鳥に、彼氏面してやったの」
「こんな彼氏やだよ…」
「こんくらいイケメンじゃないと…!」
「どの口が言ってるのかなぁ?」
「この口だ、よく見ろ。飛鳥の兄貴はイケメンだ」
「私が言う分にはいいけど、自分で言ってくるのはやめて」
翔はペロっと舌を出してくる。
「てかお前…スカートじゃん。それで2ケツすんの?」
「私が持ってるなんちゃって制服のスカートの中で、これが1番長いよ」
「まあ確かにそうだわな。でも可哀想じゃん、飛鳥のクマさんパンツなんて見たら、お前は何も減らないかもしれないけど、見た奴は確実に何か減る」
「クマさんじゃないし、紺パン穿いてるから大丈夫」
「それはそれで萎えるんだけど」
「え…引く」
「男なんてそんなもんだろ」
「翔がそんなもんなんだよ」
私はヘルメットを手に取る。
「このまままっすぐ帰るの?」
「他に何か?どっか寄りたい?」
「カラオケ行きたいー、翔の奢りで!ね?いいでしょ?かけるん、行こうよー!」
なんて、片手で腕を引っ張りながら言う。
「…マジで言ってる?」
「16歳以上だから18時以降もいれるし」
「問題そこじゃねって、分かってて言ってるんだよな?」
「いや、さすがに奢りは冗談だよ。フリータイムの支払いできるくらいは手持ちあるよ」
「じゃあいいか…飯代くらいは出してやる」
「わーい!翔大好き!」
「現金なヤツだな、ほんと」
2人でほぼ同時にヘルメットを着けて、バイクに乗る。落ちないように、翔の身体に思い切り抱きつく。
発進して、風を切る。
「あーあ、これが彼氏だったらな」
「文句あるなら降りる?」
「降りないっ」
「俺だって、貧乳の妹じゃなくて、ボインな彼女に抱きつかれたいよ」
「貧乳とは、じゃかあしいっ!」



