ー飛鳥sideーー


いつも通りの貴哉くんだ。

誰だって惹かれるでしょ、あんな笑顔見せられたら。


「貴哉くんは、笑ってた方がいい」

「ん?」


思わず呟いてしまった。だけど、たまたま地学室の前を陽キャ集団が横切ったおかげで、私の声は掻き消されたらしい。


「え?何て言ったの?」

「…秘密」

「秘密ー?!やだー!教えてよー!貴哉くんどうのこうのって言ったよね?」

「カクテルパーティ効果起きてるじゃん」

「僕らまだお酒飲めないよ?」


思ったことそのまま口にするのはいけないな、ほんと。こないだ覚えたばっかの心理学用語がふと頭に浮かんでしまったんだよ。


「カクテルパーティじゃなくてもいいけど、そういう騒がしい所でも、自分の名前とか自分に関係することは聞こえるっていう現象があるでしょ。それ」

「へえー、そういう現象1つ1つにも名前あるんだね」

「心理学は割と興味あって」


小説書く時に心理描写とか、上手く書けるようになるかなーってことで調べ始めたけど…役立ててるのかは分からない。


「貴哉くんはないの?そういう…興味あること」

「あすっ…」

「うん?」

「あっ、いや…」


あす?


「明日のこと?なんか楽しみなことでもある?」

「広い意味で言えばそうなる!うん!」


急に焦りだしたな。何だ。


「急にバグった?」

「ある意味バグった!」


…よく分かんないけど。


貴哉くんに想われてるかもしれない?
でも今は、友達でいたい。

というより…。

恋愛系の小説書きすぎて、こういうシチュエーションに敏感になってるだけだ。

気のせい気のせい。


と、半ば無理矢理思った。