「金澤くん」

「ん?」

「今年も数学と英語、よろしくお願いします…」


深々と頭を下げた。


「えー?僕がそんな頑張って教えなくても大丈夫だったじゃん?妹尾ちゃん、センスあるんだから」

「見捨てないで…そんなことないよ?」


例えば英語のミニ授業なら、小難しい文法名とか言ってきて、若干頭がハテナになりつつも、質問する隙を与えないために何となくで理解してきた。

なまじ、ニュアンスで理解しちゃうもんだから、金澤くんには“センスがある”と勘違いされてる。


「それはそうと…問題は佐倉くんなんだよなー」

「ん?いや、佐倉は普通にできちゃう人じゃん」

「僕が説明してても、難しいのか何なのかどっか行っちゃうからね。真面目に聞いてくれるの妹尾ちゃんだけになってる」


当の本人、佐倉は悪びれも無く真顔…だが、うっすら唇の裏側を噛んで、申し訳なさそうにはしている。
…と思ったが。


「勉強性の違い」

「音楽性の違い、みたいに言わないの!」

「どこぞのバンドマンだよ」


相変わらずの佐倉節を見せてきた。
はあ…まあいいけど。
佐倉のそういう所好きだし。