「さっきは自分からキスしてくれたのに?
俺からお願いしても、してくれないんだ」

「さっきから何!もう!」

「怒らないでよー」


照れの限界を迎えたらしい。

飛鳥ちゃんはギュムっと抱きついてきた。


「へえ、キスはしてくれないんだ?」

「したい方してって言ったのに!」

「あはは、ごめんごめん。ちょっと意地悪しすぎた」


満足して、2人で下に降りていった。


「あ、飛鳥ちゃん。帰っちゃうの?」

「はい」

「また来てねー!今度は一緒に料理とかしたいなー。普段料理する?」

「両親が帰宅遅い日に、兄と作るくらいですけど、人並には…」


人並とか言って、割とできちゃうじゃん。


「そうなんだー。楽しみにしてるね」


飛鳥ちゃんが気にするほど、キッチン入られたくないとか思ってないみたいだね。


「で、貴哉は送るの?」

「うん、お家まで」

「へえー。行ってらっしゃい」


何か意味深なんだけど…。


「じゃ、お邪魔しました!」

「バイバイー」


駅まで手を繋いでのんびり歩いて向かう。

飛鳥ちゃんの家の最寄りから歩いていると。


「そういやさっき、妹尾家来た話出たじゃん」

「ああ…うん」

「あの時、貴哉くん何言ったか覚えてる?」

「え、何だろう」


相変わらず突然だなぁ。


「新婚みたいに料理しようか、って言ってたじゃん?」

「翔さんに言われたね」

「それに貴哉くん、何思ったか…」

「夫にしてよ、飛鳥ちゃんのことお嫁さんにもらっていい?って言った」

「覚えてるじゃん。しっかり覚えてるじゃん」

「俺が社会人になるまで、待っててくれる?」

「気が早いなー」

「…そっか」


付き合ったばっかりだ。何急いでるの、俺は。


「けどさ、その頃もこんな感じでのんびり平和だといいなー」

「…その頃?」


俺が聞き返すと、楽しそうに笑う。