俺は立ち上がって、彼女の横に行く。


「でも大事だから、傷付けたくはないんだ。
多少は理性で何とか制止できるけど、あんま可愛いこと言ってきたりされたりしたら、分かんないや」


顔だけこちらを向けてくる。


「こっち向いて?」

「うん…」


俺の声で、やっと身体ごとこちらに向けてくれた。

自然と上目遣いになって、ああー…ってなる。


もう一歩寄って、少し顔を近付けてみた。

キスされる…!って思ったらしく、目をキュッと閉じてくる。

飛鳥ちゃんのキス顔ねぇ…。
一言、ヤバい。


理性吹っ飛ばす気満々じゃん。
絶対無自覚だし、それが1番ヤバい。


「ん…?」


飛鳥ちゃんは目を開けた。

あれっ、しないの?とばかりに。


「貴哉くん…?」

「しないよ?キスされると思った?」

「…思った」

「キス顔可愛かった」

「からかわないでよー」


軽く唇を尖らせて不満な表情を見せてくる。


「今しちゃったら、飛鳥ちゃんのことドキドキさせられないじゃん。いつするの?って、しばらく焦らすね」

「めっちゃ女慣れしてるじゃん」

「してないよ、失礼な。飛鳥ちゃんが初恋みたいなもんだし」


また不満そうに見つめてくる。


「デート、どこ行こっか?」

「あっ、話逸らしたなっ!」

「あれー飛鳥ちゃん、頭の中キスでいっぱいじゃん」

「全部貴哉くんのせい」


そうだね、俺のせいだ。


「どっか、お揃いの物買いに行かない?
飛鳥ちゃんのお誕生日祝いもしたいし」

「うん、行く」


意外とあっさり決まる。

両想いになった飛鳥ちゃんとの関係が、始まる。