君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。



ー貴哉sideーー


俺の腕の中には、飛鳥ちゃんがいる。
泣きじゃくっている。

初めてちゃんと、弱い所も見せてくれた。

いつもより小さくて脆くて、すぐ壊れてしまいそうな飛鳥ちゃんを、優しくそっと抱き締めた。

そうするしかできなかった。

いや、そうしたかった?

下心とかそういうんじゃなくて、不安げな彼女を包み込んで安心してほしかった。


どうして抱き締めてきた俺を受け入れてるんだろう。心が弱ってるからってだけかな。

だとしたらただの都合が良い男かもしれないけれど…今はそれでもいい。


しばらく泣いていた飛鳥ちゃんも、次第に落ち着いた。
それでも離したくないっていう俺の気持ちは、下心だろうか。

少しだけ抱き締める力を強めた。


「貴哉くん…?」

「何があったか、ちゃんと話してみない?」

「えっ…」

「俺だって多少は察してるよ?けど、飛鳥ちゃんの口から聞きたい。
話したくないならいいけど、話したいならいくらでも聞くよ」


どうしても、飛鳥ちゃんを守りたくなった。
元気にしてあげたくなった。

この気持ちの名前を、俺は知らないけれど。


「…もうすぐ授業始まっちゃうし」

「マジメかっ!今日はもう、いいんじゃないかな」

「え…いや、でも…」

「日本史も、その後の授業も、今日は2人してサボっちゃお?」

「それじゃあ貴哉くんの欠時付いちゃう…」

「ほら、話してくれるって決心したんでしょ?これから俺、休む予定ないし。ほら、どっかで話そ?ねっ」


飛鳥ちゃんは、うーん…と呟いて。


「じゃあ、たまには貴哉くんに甘えてみる」

「うん、そうこなくっちゃ」

「…風邪引いて倒れた時も甘えてるから、たまにでもないや」

「たまにじゃなくていいよ。僕にはいっぱい甘えていいんだよ」


飛鳥ちゃんに甘過ぎるかな。

…それにしても、どこにしようかな。
今いる教室、この後授業無い気がするけど、もしかすると誰かが自習しようと思って使うかもしれない。


「ここじゃ何だから、家来る?」

「え?」


若干警戒心というものを感じてるような反応だった。

いや、別に下心があるわけでは…!