古典Bの教室に行くと、真顔でスマホをいじっていた男子と目が合う。

彼の後ろの席のため近付いて行くと、特にニコリともせずに軽く手を挙げてくる。
まあ、あの表情は通常運行だから気にしてない。


「よっ」

「おはよー、佐倉!」


私は、彼の後ろの席に着く。

彼は佐倉 律(さくら りつ)。
去年から同じクラスで、私の“面白そうな人センサー”が見事察知して、珍しく自分から話しかけて仲良くなった人だ。

でも、だからと言ってそんなに愛想の良い雰囲気は出してない。
180cm近いすらりとした長身、
ストレートの綺麗な黒髪、
基本真顔…
普通の人は、面白そうとか感じないだろうけど。何なら若干圧さえ感じるかもしれない。


去年の4月、真顔のままふざける、笑うと無邪気で可愛い…とか、まあ色々気付いて。
異性としてじゃなく人として、ああこの人好きだなって思って、声をかけた。

そして、仲が良い割には趣味が同じわけではない。曲の好みは何となく似てるけど…ホントそれくらい。

私から見たらマニアックに感じるアニメとかゲームが好きで、雰囲気からは感じないが、なかなかのオタク。

学校にギリアウトな感じのやつ持って来るとか、何なら今もギャルゲーしてるし…。そんな堂々っぷり。

小説執筆くらいしか趣味も無いし、特に公言してるわけでもないから、こうやって堂々と好きだって言える趣味があるのは、私からすれば羨ましさすら感じる。

なかなかイケメンで、傍から見たら私が猛アタックしてるようにしか見えない。

なんなら、佐倉も佐倉で女子の中では私といることが多いから、付き合ってると噂されることもある。

だけど、私と佐倉の間には恋愛感情は無い。
ただただ、仲が良いというだけ。

男女の友情の方が、女子同士の友情より私はよっぽど信じられる。


「うん、やっぱ佐倉好きだわ」

「教室の真ん中で告白されても」

「人間愛だから問題なっしんぐ」


彼は振り返って流し目で見てくる。
まずツッコミを入れる場所がずれてるし。
普通は、何急に好きって?ってなるんです。

まあ、好きって突然言い出す私もおかしいのか。