翌日、昼休み。昨日の今日だからか、貴哉くんからは何も連絡が来ていない。

それどころか、凜や知愛からも来てない。

いいや、1人でのんびり食べよっと。

物理室で1人過ごし、授業が始まる少し前。
貴哉くんがやって来る。

入ってきた彼と目が合う。
いつもより大人っぽく見えた。

…ああ、何か言おう。
そう思いながら内心焦っていると。


「飛鳥ちゃん、お疲れー」


なんて、フワッと微笑んで言ってきた。


「えっ、ああ…お疲れ」


いつも通り?意識してたの私だけ??


「何ポカンとしてるの?」


昨日の昼休みの記憶は、私の捏造した記憶なのだろうか?
そう思えるくらい貴哉くんはいつも通り。


「別に…」

「昨日のことだけど」


突然“昨日のこと”なんて言ってきて、思わずビクッとする。


「あまり気にしないで?俺、ちょっと余計なこと言っちゃったと思うから」

「え…?」


あまりに優しく微笑む貴哉くんに、何て言えば良いのか分からなかった。

無かったことにしろ、ってこと…だよね?


それはつまり、本当は…

貴哉くんはそれ以上何も言ってこなくて、私も何も言えなかった。