「年下とか、年上とか、そういう好みは?」


ちょっと攻めてみたり?


「年齢はそんなに気にしないかな、近い方が良いけどね。
大人っぽい所があって、でも一緒にバカやれる人がいい」


そっかぁ…。
なんか、佐倉くんっぽい気がするけど。


「…佐倉くん?」

「ん、何が?」

「…好きな、人」


飛鳥ちゃんは困ったように笑った。


「ねー?タイプだけ言ったら佐倉だよね」

「え…」

「けど佐倉は、恋愛感情抱く前に、友達として仲良くなったから。
これからも、佐倉にそういう感情は抱かないと思う」


あービックリしたぁ。
そうなんだよね、は心臓に悪かった。


「逆に貴哉くんはどういう人好きなの?」


俺は無言のままドキッとした。

え、好きな子に好きなタイプ聞かれる感じ?


「私のタイプばっか聞いてても、誰得?って感じじゃん」


俺得だよっ…!

え、でも何?告白しろと?
…仕方無い、どうせなら匂わせてみようか。


「…優しくて、面白くて、明るくて。俺の好意に気付いてるのか気付いてないのか、妬いちゃうくらいに笑顔を見せてくれる、可愛い子」


さすがに、目は合わせられなかったけど。

ああ、言ってしまったぁ!


「…へえ、そんな子いる?いるんなら紹介してほしいくらいだわ」

「え…ああ…」


何この、反応に困る感じ。
飛鳥ちゃんだよ、と言いたいのに言えない。


「でも貴哉くんだもん。
もしそんな子いるなら、すぐに両想いだよ。
ね、付き合えると良いね」


…それが、そうじゃないから今こうなってるんじゃん。

こんな好きなのに。

どうして、そんな他人事みたいに言うかな。


“好き”の一言も言えてないくせに。
俺の子供じみた八つ当たりみたいだけど…。

ほんの少しだけ、気に障った。


「…鈍過ぎ」


俺は思わずそう呟いて、ベンチを後にした。