ただ…別に恥ずかしかったわけじゃない、としたら。
引き止めてこっちを向いた時の、あのどこか熱っぽい感じは何だっただろう。
…いや、それはまだ段違いに気付いてない時か。
だったらもっと分からない。
でも、ボタン留め直している間、終始照れてるように感じた。
…それは、都合良く俺が解釈しただけかもしれないな。
少しずつだけど、飛鳥ちゃんに意識してもらえるようになったのかもしれない。
だとしたら嬉しいな。
ご飯を食べ終わって、やっと勉強の方に手をつけ始める。
最初の5分こそ真面目にやってたものの、言い出しっぺは佐倉くんのくせに、突然のおふさげスイッチが入って、飛鳥ちゃんと言い合い無双モードになる。
もはや金澤くんからしたら、日常のひとコマに過ぎないらしく、特に止めるでもなく、BGM代わりに自分の自習をチャチャッとやり始めたくらいだ。
本当に自由な人達だな…。
ふと気配を感じて、廊下の方に目を向けた。
植草さんと仙葉さんがいた。
ただ通り過ぎただけだったけど、確実に飛鳥ちゃんのことを認識して、うっすらと嫌悪感とも取れるような表情を浮かべたように見えた。
当の飛鳥ちゃんも、彼女達の会話を聞いてしまった佐倉くんも、全く気付いていないけど。
…まあこの様子だと、放課後も勉強会するルート不可避だね。
そして案の定時間が足りず、放課後も同じ教室で行うことになるのでありました。



