10月終わり。

特に飛鳥ちゃんと連絡は取っていなかったけれど、日本史の教室にいればそのうち来るだろう。
そう思って1人で昼食を取っていた。


ご飯を食べ終わるも、飛鳥ちゃんは来ない。

植草さんや仙葉さんと食べてるのかな。
もしくは…佐倉くんや金澤くん?

いやいや、別に彼らは飛鳥ちゃんのことを女の子として見てるわけじゃないし。

仮に好きだとして、俺は奪うつもりでいるんだ。
弱音なんか吐いてる場合じゃない。


「あっ…貴哉くん」

「ん?飛鳥ちゃん!」


後ろのドアから入ってくる飛鳥ちゃん。
…どうしたんだろう?元気が無いように見える。


「もうご飯食べた?」

「うん。飛鳥ちゃんそのうち来るかなーって思って、ここで1人で食べてた」

「そうなんだ」


元気が無さそうっていう先入観があるからかもしれないけど、それにしても声に力が無い。


「飛鳥ちゃんは?」


そう問いかけると首を横に振った。


「食欲無いの?」

「うん…なんか、頭痛いっていうか」


彼女の席に向かう足取りもフラフラしてるように見える。リュックを机に置いて、そのまま前屈み気味に立ち尽くしている。

そんな彼女に思わず近付いて、


「大丈夫?」


と声をかける。

すると、弱々しい瞳で俺に目を向けたと思ったら、彼女の身体はグラッと揺れ、こちらに倒れ込んできた。


「えっ、飛鳥ちゃん?」