翌週の体育。

俺の方が早く小体育館に着いて、飛鳥ちゃんを待っていた。

案の定3人で来て、飛鳥ちゃんは俺と目が合うと嬉しそうに手を振ってくる。

そして、何の躊躇もなく俺の左側に座ってくれる。


「練習してきた?」

「え、してない」

「俺めっちゃしたよ!
分かんなくなったら、もう俺のこと見てて!」

「そしたら、ずっと見ることになる」


ずっと、俺だけ見てて?

…なんて、うっかり口にしないように。


「飛鳥ちゃん…そんなに覚えてないの?」

「まあ、何回かやれば思い出すよ」

「さすが」

「…んー、何か私、煽られたね?」

「煽ってない!!」


明るくニコニコしてくる。


授業の合間の休み時間。

飛鳥ちゃんは先生と話していて、必然的に植草さんと仙葉さんと一緒になる。


「貴哉くんさ、今度の創作一緒にやる?」


植草さんがそう声をかけてきた。


「創作?」

「うん、ある程度全員でやったら、好きなようにグループ組んで好きな曲やるの」

「へえー、そうなんですか」

「飛鳥ちゃんから聞いてない?」

「特には…」


飛鳥ちゃん、とりあえずこの2人と組むだろうし…。俺も一緒になるのが1番だよね。


飛鳥ちゃんが戻ってきて、何となく表情を曇らせたように見えた。

初めてのダンスの時みたいに。


「創作の話してたんだー」

「へえ…」


空返事をして、俺の横に座る。

ほんの出来心で、こんなことを聞いてみた。


「ヤキモチ?」


ポカンとしていたけれど、少し遅れてこっちを向いた。


「はっっ?」


明らかにビックリしたように見える。


「他の女の子と喋ってて、ヤキモチ妬いてるのかなーって」

「んん…」


…あれ?意外な反応を見せた。

照れるというよりかは、困惑してるように見えるけど。


「妬いてないっ!」


少しだけ考え込んだように見えたけど、あくまで否定の形を取られた。


「んー、何だよー」

「別に、妬いてないです」


2回も否定しなくても…。


「へぇ、飛鳥ちゃんて、そういう反応する時もあるんだぁ…」


仙葉さんがニヤニヤして楽しげに言う。

一方その横で、植草さんは1人面白くなさそうに飛鳥ちゃんを見つめていた。