君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。



体育の選択種目が変わってから、初の体育。

ダンス!!

どんなのやるんだろう?


小体育館に行くと、ダンス着みたいなのを着た飛鳥ちゃんが、1人でストレッチをしていた。

飛鳥ちゃんの友人である女の子2人も近くにいるけど、2人で喋っているようだ。

なんて眺めていると、飛鳥ちゃんがふっと顔を上げた。


「あっ、貴哉くん!」


俺に気付いてくれた彼女に、手を振ってみた。

すると、やたら嬉しそうにニコニコする。

…俺に会えたの、そんなに嬉しかったのかな?

飛鳥ちゃんが俺に会えて嬉しいのなら、俺も嬉しいのだけど。
とっても、嬉しいのだけど。

ああ、好きだなぁ。


「まだ男子1人みたいだね」

「あー、あの2人、結構欠時数ギリまで休むっぽいから、下手したら貴哉くん1人かも」

「ふぅん…俺あんまりそういうの気にしないかな」


飛鳥ちゃんがいるから大丈夫!なんて言いそうになる。

それじゃあ、彼女のことを女子として見てないみたいじゃん!危ない危ない。


「あ、ねえねえ貴哉くん。
貴哉くんってダンス経験者なの?」

「いや…全くやったことないですよ」


やたら俺に声をかけてくれる女の子。

名前が分かりません。聞いたっけ。
もう1人も名前分かんないけど。


「あの、先輩達の名前知らないと思うんですけど、聞いても良いですか?」

「あー、言ってなかったっけ?うちは植草凜!」

「私は仙葉知愛です」

「よろしくお願いします」


俺は軽くペコリとした。

ふと飛鳥ちゃんに目を向けると、何考えてるのか分からない顔でぼんやりしている。

どうしたんだろう?


「あすっ…」

「さ、始めるよー。集まってー!」


始まる時刻丁度に現れた先生の声によって掻き消されてしまった。

小体育館の前の方に歩きながら、


「何か言いかけた?」


と聞いてきた。


「あ、うん…後で」

「ん、了解」


優しく微笑んだ飛鳥ちゃん。
でも…。
俺何となく気付いちゃったんだよ。

うっすらと作り笑顔に見えた。

俺の自惚れかもしれないけど、ヤキモチ…かな。
そうだったら、嬉しいけど。