「…いや、あの」
飛鳥ちゃんが恐る恐る間に入ってきた。
「折り畳み傘貸そうか?ってことだったんだけど…」
「え?」
よく見ると、手に持つ大きい傘は可愛らしいキャラクターのデザインだ。
「あ、じゃあつまり…俺が借りてっても、佐倉くんと相合傘する羽目にはならないと!」
「…何で俺との相合傘は罰ゲームみたいなんだよ」
俺からしたら罰ゲームです!!
飛鳥ちゃんは不思議そうな顔をしたまま、リュックから折り畳み傘を取り出す。
「ん」
と、こちらに差し出してくる。
「ありがたくお借りします!」
「うん!」
…ホント、可愛い笑顔を見せてくる。
雨上がるんじゃない?ねえ。
「じゃあ、バイバイ!明日返すね!」
「うん、了解。バイバイ」
飛鳥ちゃんと佐倉くんは各々の傘を差して帰って行きました。
帰宅して干してから、撥水加工を強化しようと思って色々手を施してみた。
完全な自己満だけど。
翌日。地学で早速会える!
飛鳥ちゃんまだかなー。
ソワソワしながら待っていると、イヤホンで音楽を聴く飛鳥ちゃんがやってくる。
「おはよー!!」
いつも以上に元気な挨拶をすると、彼女はフッと微笑んで軽く手を振ってくる。座ってからイヤホンを外して、
「おはよ」
と、ちゃんと言ってくる。
律儀だねぇ。
「あ!傘!忘れてた!」
「持って来るの忘れたの?」
「いやいや。飛鳥ちゃん目の前にしてワーイってなって、返し忘れそうだった」
「何だそりゃ」
俺はリュックから取り出して、
「はいっ!ありがと!」
「ん、どいたま」
…今日の飛鳥ちゃん、眠いんだな多分。



