「シュクラン(アラビア語)」真衣。

「カム オン(ベトナム語)」梨花。

「メルシー(フランス語)」と愛。

「タック(ノルウェー語)」と拓也。

「ダンケ(ドイツ語)」と幸太。

みんなの温かい眼差しに、風子の緊張が少しほぐれた。



「ま、真衣ちゃん!やっぱり恥ずかしいよ」

「似合ってるよ〜。ねえ、みんなもそう思うでしょ?」

舞台発表の時間が近づき、風子たちは制服から衣装へと着替えた。「せっかくだし、色んな国の民族衣装を着ようよ」と真衣が言ったからだ。世界研究部の部室の奥には、色んな国の民族衣装がある。その中には、風子と真衣が初めて会った時に着ていたサリーもある。

風子はコルトというフィンランドの少数民族の衣装を着ている。色彩豊かな衣装だ。真衣はアオザイというベトナム丈の長い上布とズボンを、愛は赤いチャイナドレスを着ている。

「なんか変な感じだなあ」

幸太がチャロというメキシコの衣装を見つめながら言った。頭にはソンブレロと呼ばれる帽子をかぶっている。

「似合ってるよ」

着物を着た拓也と、ハンガリーのマチョー地方のたくさんの花の刺繍が入った衣装を着た梨花が言う。