二人のないしょ話

そう聞くと、小泉さんは少し考えた。

まずい質問だったかな……、と不安に思っていると、小泉さんが話し出した。

「私のお兄ちゃんは、生まれつき耳が聞こえないの。だから、家では手話を使っているの……」

うつむいているので、小泉さんがどんな表情をしているかわからない。小泉さんは小さな声で話を続けた。

「お兄ちゃんが文化祭を見に行きたいって言ってくれたの。楽しんでもらいたいって思ったから……」

「そっか。じゃあ、一生懸命頑張るよ」

小泉さんが顔を上げた。その顔に微笑みが浮かぶ。

「じゃあ、練習しようか」

「うん」

小泉さんの好きな歌を手話ですることになった。俺の知らない曲だ。

「ちょっと聴いてみてもいい？」

「もちろん！すごくいい曲だよ」

小泉さんの意外な一面を知れて、ラッキーだなと思った。

曲をスマートフォンで聴いている間、小泉さんは本当に幸せそうだった。俺も見ていて幸せを感じる。