二人のないしょ話

キョトンとした顔の同級生を残し、俺は全速力で廊下を走った。

色々な感情が頭の中を巡る。いじめていた相手への怒り、小泉さんが話してくれなかった悲しさ、そして何より……守れなかったという激しい後悔。

どんな思いで、小泉さんは俺と一緒にいたんだろう。俺は小泉さんの心の支えになれたのだろうか。

無我夢中で走っていると、見慣れた後ろ姿を見つけた。小泉さんだ。

「音羽!!」

俺が大声で叫ぶと、小泉さんはゆっくりと振り返る。

「神山くん……」

逃げようとしたので、素早く腕をしっかり掴んだ。

「……放して」

うつむきながら小泉さんが言う。表情は見えないけれど、泣いてしまうのを堪えているようだった。

「わかってる。でも、ちゃんと話がしたかったんだ。……なんで黙っていたの?俺、そんなに頼りない?」

「違うよ!!そんなことない!!だって……」

顔を上げた小泉さんの目から、大粒の涙がこぼれる。小さな子どものように、小泉さんは激しく泣きじゃくった。