かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 そもそも秘書の仕事は、上司が円滑に仕事をできるようにサポートすること。秘書同士が接する機会があまりに少ない。

 入社式の次の日の朝、山浦さんが私を紹介したいから全員集まるようにと声をかけてくれて、そこで先輩たちと初対面したわけだけど、とても歓迎されている雰囲気ではなかった。

 山浦さんが言っていた通り、副社長の秘書の座を狙っていた先輩が多いようで、敵意を向けられていた気がしたもの。

 だけど幸いなことに秘書課のオフィスで仕事をすることがほどんどないから、先輩たちと顔を合わせる機会もなく、今のところなにかされたり、言われたりしてはいない。

「そっか、でも本当にすごいよな、大勢いる新入社員の中でたったひとりだけ選ばれるとか。五か国語話せるとか尊敬しかないわ。俺、英語でさえ怪しいや。あ、よかったら今度教えて。いっそのこと、みんな集めて授業やってよ」

「授業って……。私、教えられるほど発音よくないよ?」

「なに謙遜してんだよ。それに大丈夫、俺より下手ってことは100パーセントないから」

 野沢君と話していると、本当に楽しいんだよね。男性だって忘れちゃうくらい自然体で話せる。