かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 帰ったら夕食の準備をしないと。誠司君は将生が今日は早く帰ってくるなんて断言していたけれど、最近はずっと帰ってくるのは二十時を回ってからだ。今日も遅いんじゃないかな。

 冷蔵庫に入っている材料を思い出しながら献立を考えていると、降りる駅に着いた。

 駅からマンションまでは徒歩で三分と近い。電車でも三駅だ。もしかして住むところも、私が通勤しやすいようにアクセスしやすいところを選んでくれたのだろうか。

 そう思うとまた私の胸の鼓動は忙しなくなる。

 改札口を抜けたところで指輪をつけていないことを思い出し、端に寄って足を止め、急いで左手薬指にはめた。

「毎日忘れないようにしないと」

 高いのはいらないと言ったのに、毎日付けるものだからと言って将生はすごく高価な指輪を買ってくれたんだよね。

 その時は嫌われていると思っていたから、世間の目を気にして高いのを買ってくれたのね、なんてひねくれたことを思っていたけれど……。

「どんな思いでこの指輪を選んでくれたんだろう」

 結婚してから初めて知った将生の想い。

 戸惑って動揺して、自分のことでいっぱいいっぱいだった。正直、これから先、将生のことを好きになれるかわからない。

 結婚からは逃れられないと思っていたし、愛のない政略結婚だと割り切っていた。でも彼の気持ちを聞いた今は、そう思えない。

 ちゃんと将生と向き合わないといけないよね。それに私はまだ自分の気持ちをしっかり伝えられていない。