かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「きっと今も小毬のことが心配で、仕事が手につかなくなっているんじゃないかな。今日は絶対早く帰ってくるよ」

「そう、かな……」

 これまでだったら、そんな将生の姿を想像することができなかったけれど、今は少し想像できてしまい、ますます正体不明の感情に心が覆われていく。

「今日はこれから山浦さんに社内を案内してもらい、時間まで仕事を教わって。三ヵ月間は試用期間だから残業はしないようにね」

「……はい」

 そうだ、私たち新入社員は正式雇用に至っていない。この三ヵ月間、しっかり頑張らないと。

 そのあと、山浦さんに秘書課のオフィスがある二十四階を中心に案内してもらい、頻繁に使う部屋や休憩スペースなどを見て回った。

 秘書課のオフィスへも向かったが、この時間は誰もおらず、自分の席だけ教えてもらった。

 そして副社長室のすぐ隣にある秘書室に案内された。十二畳ほどの広々とした室内で、デスクが三つあり、両側の壁際には資料がたくさん詰まった棚が設置されていた。奥の部屋には給湯室も完備されているようだ。

「社長、副社長、そして専務までは秘書が三人つく決まりとなっているのですが、副社長に関しては先ほども申しましたがいろいろと事情があり、私ひとりで対応しておりました。ですが業務拡大により私のほうも忙しくなるので、こうして荻原さんが入ってくれて大変助かります」

「そうなんですね。……精いっぱい務めさせていただきます」

 私が力になれるか不安だけれど、できることを一生懸命やりたい。