事の真相を知りたくていつもより早口になる。すると目が合った誠司君は困ったように眉尻を下げた。

「よく知ってるね」

「説明会の時、他の人が話しているのを聞いたの。知り合いが勤めているみたいで……」

「そっか」

 すると誠司君は立ち上がり、私の前までやってきた。目線を合わせるように屈むと、昔と変わらない優しい笑みを零した。

「将生に頼まれたんだ。小毬のことを」

「え……将生に?」

 目を白黒させる私に誠司君は続ける。

「あぁ。小毬には女性が多く、俺の目が届く秘書課に配属させてほしいって」

 そんな理由で私、秘書課に配属されたの? 結婚したら自由になれると思っていた私が浅はかだったのかも。

 そうだよね、いくら就職したからといっても将生の父親と兄が経営する会社に入社したんだもの。自由なんてあるわけないんだ。

 将生に応援してもらえた時、嬉しかったんだけどな。誠司君に頼むってことは、私のことを信用していないからだよね。

 失敗してお義父さんと誠司君に迷惑かけることにならないよう、手を回したの?

 そう思うとひどく傷ついている自分がいることに、驚きを隠せない。