「大丈夫だよ、小毬。山浦さんは俺の第一秘書で俺たちの関係も把握済みだ。もちろん他言など絶対にしない」

「えっ?」

 隣を見ると、山浦さんは「ご安心ください」と丁寧に頭を下げるものだから恐縮してしまう。

 再び視線を誠司君に向けると笑顔で続けた。

「俺たちの関係がバレないようにするには、事情を把握している人物が必要だと判断したんだ。山浦さんは頼りになる人だから、小毬もなにか困ったことがあれば、なんでも相談するといい」

 誠司君が話したあと、改めて山浦さんは言った。

「荻原さん、どうぞよろしくお願いいたします」

「こちらこそご迷惑おかけしてしまうと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」

 つられるように頭を下げたものの、肝心なことを聞いていないことに気づく。

「誠司君、どういうことなの? 私が秘書課に配属だなんて。だって新入社員が秘書課に配属されることはないんだよね?」

 説明会の時、同じ新入社員の子たちが話しているのを耳にしたことがある。秘書課の社員は、他部署で経験を積み、実力が認められた者だけしか入ることができない高嶺の部署だと。