太陽の日差しがたっぷり差し込む室内の中央には、革張りのソファとガラステーブルがあって、壁には芸術性を感じる絵画が飾られている。

 そして窓際の立派なレザーの椅子に腰かけている誠司君は私を見て、にっこり微笑んだ。

「入社おめでとう、小毬。まさか小毬と一緒に働ける日がくるとは夢にも思わなかったから嬉しいよ」

 そんな歓迎の言葉をかけられても、「ありがとう」と返せるわけがない。一刻も早くこの状況を説明してほしい気持ちでいっぱいになる。

 辞令式終了後、みんなと別れを惜しむ間もなくすぐに配属先の部長たちが私たちを迎えにきてくれた。

 みんな秘書課に配属された私をチラチラ見ていく中、秘書課の部長である山浦(やまうら)さんがやって来た。

 四十代くらいの男性で、細い目が印象的でちょっぴり怖そうな雰囲気の人だった。

「行きましょう」と言われ、連れてこられたのは秘書課かと思いきや、誠司君がいる副社長室だった。

 もしかして秘書課に配属されたのには、誠司君が一枚絡んでいるのだろうか? 聞きたいけれど山浦さんが隣にいるから聞けない。

 それよりちょっと待って。さっき誠司君、山浦さんがいるのに私のことを「小毬」って呼んだよね?

 慌てる私を見てなにを考えているのかわかったのか、誠司君はクスリと笑った。