「初対面の人と仲良くできちゃうところが。さっきも食事中、輪に入っていけない人に積極的に声をかけて気遣っていたよね。それにリーダーシップ力もある。……なかなかできないよ、あんなに大勢の人をまとめちゃうなんて」

 私はどちらかといえば、対人関係は消極的なほうだ。将生との一件でよく女子から陰口を言われていたし、自分から声をかけることはもちろん、輪に入っていく勇気もなかった。

 意見を出してくださいと言われても、絶対に手を上げられない人間だった。

 当たり障りない話をする友人はたくさんいたけれど、親友と呼べる存在はたったひとりだけ。

 私と将生の関係を知っても、『あんなやつが婚約者なんて、災難だね』なんて笑って言ってくれた吉井(よしい)由良(ゆら)だけだ。彼女とは中学から大学までずっと一緒だった。

 由良にだけは、なんでも話すことができる。

 そんな私からしたら、本当に野沢君のことを尊敬してしまう。

「野沢君、友達いっぱいいるでしょ? だって野沢君、いい人だもの。困っていたら、みんななんでもしてあげたくなっちゃうんじゃないかな」

 ついベラベラと話してしまったあとに気づく。私ってば調子に乗り過ぎだと。

 知り合って数時間の私に、野沢君のなにがわかるんだって話だよね。それなのに、いかにも知ったか風で言ってしまった。引かれただろうか。

 現に野沢君、瞬きすることなく固まっちゃっているし。

「あ、あの……」

 謝ろうとしたけれど、徐々に野沢君の頬や耳が赤く染まっていくのがわかり、視線が釘づけになる。