かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「よかったら一緒に飯食おうぜ」

「……ありがとう」

 素直な思いを伝えると、野沢君は目を瞬かせたあと、少年のように笑った。

「お礼を言うことじゃないだろ? 俺たち、もう友達なんだから」

 そう言うと「ほら行くぞ」と軽く肩を叩かれた。

 野沢君たちと社員食堂に向かい、カウンターで配膳された定食が乗ったトレーを手に空いている席に着くと、野沢君はひとりでいる人に声をかけていく。そして自分たちの席に誘い、いつの間にか大所帯になっていた。

 みんなにどこの部署を希望したのか、出身はどこなのかと積極的に聞いている姿を見て、なんてコミュニケーション能力が高い人なんだろうと感心してしまう。

 すると隣にいる田澤さんがボゾッと耳打ちした。

「すごいでしょ、あの野沢君の必殺! 人キラースキル。大学でもすっごい友達が多かったのよ。自然と野沢君の周りには人が集まるの」

「そうだったんだ」

 でも納得できる。野沢君って人を引きつける魅力があると思うから。

「おまけに誰に対しても優しくて、よく些細な変化にも気づいて声をかけてくれるようなやつだから、男女問わず人気者だった。……会社でもそうなりそうで気が重い」

「えっ?」

 えっと……それはつまり、田澤さんは野沢君のことが好きってこと? だから気が重いの?

 すると田澤さんは小さく人差し指を立てた。