かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

　お義父さんや誠司君にも、私との関係は伏せてもらえるよう伝えてある。

「最初は慣れないことばかりで大変だと思うが、頑張れよ。できる限り協力するから」

「えっ？」

　優しい言葉をかけられ、箸を持つ手が止まってしまった。すると将生は怪訝そうに私を見る。

「なんだよ、その顔は。……最初は反対していたけど、途中から応援するって言っただろ？」

「それはそうだけど……」

　やっぱり将生に優しくされるとびっくりしちゃう、とは言えない雰囲気だ。だけど、どうしても慣れない。

　言葉が続かずにいると将生はハッとし、わざとらしく咳払いした。

「とにかく無理だけはするな。お前は昔からバカ真面目なところがあるからな。無理して失敗して、周りに迷惑かけないようにしろよ」

　刺々しい声で言われたものの、端端に不器用な優しさが感じられて胸がキュンとなる。

　いやいや、キュンじゃないでしょ！　嫌味も言われたじゃない。バカ真面目とか！　……でもさっき、将生は早口で言った。昔から恥ずかしいことを言う時は、早口になるクセがあるんだよね。

　長年一緒にいるからこそ気づける一面。それが胸を苦しくさせる。