「あ、うん」

 呼ばれて急いでキッチンへ向かい、ふたりで協力して準備をし終えると、向かい合って手を合わせる。

 仕事で遅くなることが多い分、朝だけはふたりで食べようと言われ、暮らしはじめてからこうして朝食を共にしているわけだけど……。

 甘い厚焼き玉子を頬張りながら、綺麗な箸遣いで食べ進める将生を見る。

 将生と暮らしはじめて一週間以上経ったけれど、いまだに彼に好意を持たれていることが信じられない。でもこの一週間で、好かれていると実感することが度々あった。

 こうして朝食を作ってくれるのはもちろん、なにかと私を気遣ってくれる。積極的に家事を手伝ってくれるし、なにより私を見る将生の目は優しくて甘い。

 実感するたびに心の中がむず痒くなり、そして戸惑う。だって私は誰かを好きになる気持ちがわからないのだから。

 それに冷たくされることに慣れているせいか、優しくされるとどう反応したらいいのかわからなくなる。

 そんなことを考えながら食べていると、私を見た将生は「フッ」と笑みを零した。そして自分の唇の端を指差した。

「小毬、ここ」

「えっ?」

「付いてる」

 自分で取るより先に将生は腕を伸ばし、私の口に付いていた米粒を取ってくれた。

「ん、取れた」

 そう言うと普通に食べちゃうから、こういう甘い雰囲気に慣れていない私は本当にどう反応したらいいのか非常に困ってしまう。