「だってこれまでは将生の気持ちを知らなかったから……。でも今は違うでしょ? 義務、じゃないんでしょ?」

「……っ」

 小毬はわざとやっているのだろうか? いや、わざとじゃないとわかっている。……わかっているけど。

 めちゃくちゃに小毬を抱きたい欲望と、初めて俺の気持ちを理解してくれた彼女を大切にしたい気持ちがせめぎ合う。

「……将生?」

 顔を覆っていた手を退けて、恐る恐る俺の様子を窺う小毬。

 恥ずかしいのは、俺のことを意識している証拠だと自惚れてもいいんだよな?

 早く好きになってほしいと焦っていたが、元はと言えばはっきりと気持ちを言葉にして伝えなかった俺が悪い。それなのに感情の赴くままに彼女を抱きたくない。

 身体の熱を必死に鎮めて、小毬の衣服を整えた。

「え、将生?」

 戸惑う彼女の身体を起こして、乱れた髪を整えると、よりいっそう小毬は困惑しはじめる。

 その姿はやっぱり愛しくてあたたかい気持ちで覆われた。