かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「小毬」

 愛しそうに名前を呼ばれるたびに幸福感を与えられる。

 肌を重ね、お互いのぬくもりに酔いしれ。身体と言葉と心で愛を伝え合う。

「将生……大好き」

 与えられる刺激が苦しくて呼吸を乱しながら、それでも必死に想いを伝えると、応えるように将生は私の唇を塞いだ。

「ん、俺も」

 この日の夜も、大好きな人のぬくもりに触れて幸せな気持ちのまま眠りに就いた。




 一年後――。

 私と将生はヒースロー空港発成田行きの便に乗っていた。長いフライトもあと少し。

「あーあ……。楽しかった旅行も終わっちゃったね」

「あっという間の十日間だったな」

 私と将生は、行けずにいた新婚旅行でイギリスに行っていた。長いようで短かった十日間は、毎日が楽しくて最高の思い出となった。

 二十四時間ずっと一緒で、本当に幸せで……。だからこそ寂しさを覚える。

「明日からまた頑張らないとな」

「……うん」

 実は三ヵ月前から私は副社長の第二秘書から、営業部の部長の秘書に就いた。それというのも、今は会社で〝荻原小毬〟ではなく、〝村瀬小毬〟として働いているからだ。

 公表した当初は周りの反応にドキドキしたけれど、意外なことに風当たりは強くなかった。