かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「母さんがそうだった。一見華やかな世界ほど醜いものはないんだ。陰でよく泣いていた。……そんな思いを将生は小毬にさせたくなかったんだと思う」

 新たに知る将生の想いに泣きそうになる。

 どうして私はこんなにも将生に愛されていたのに、気づくことができなかったんだろう。

「それであそこまで会社を大きくさせたのは、本当にすごいと思うよ。経営者として尊敬している。それと同時に羨ましくてさ。将生は愛する人と出会って結婚し、自分の道を突き進んでいるんだから」

「誠司君……」

 私たちの結婚が生まれる前から決まっていたように、誠司君が会社を継ぐことは生まれる前から決まっていたこと。

 きっと重圧もあるよね。いつも笑顔だけど、計り知れない苦労もあるはず。

 誠司君の気持ちを考えると、なんて声をかけたらいいのかわからなくなる。

 そんな私の心情を察したのか、誠司君は明るい声で言った。

「もちろん俺は俺で、父さんの跡を継いで会社を大きくしたいって夢を抱いて今の道に進んだんだ。……後悔なんてしていないし、やり甲斐のある毎日を過ごせて幸せだよ。だからそんな顔をするな」

 彼の手が伸びてきて、頭をポンポンされた。それは幼い頃、私が落ち込んでいる時によくやってくれていたこと。