かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 ありのままの将生で接してくれている気がして嬉しくて、私もまた変わったと思う。よく言い返すようになったし、文句も言えるようになった。

 やっと本物の夫婦になれた気がする。

「それにしても本当に将生は、弟ながらすごいと思うよ。小毬のために会社を設立しちゃうんだから」

「えっ、私のためってどういうこと?」

 日本酒を飲みながらしみじみと話す誠司君に聞き返すと、彼は目を瞬かせた。

「どういうことって……聞いていないのか? 将生から」

「うん」

 そんな話、聞いていない。将生は自分がやりたいから会社を立ち上げたんじゃないの?

 知りたくてジッと見つめていると、誠司君は困ったように頭を掻いた。

「まいったな、俺はてっきり小毬は知っているとばかり思っていたから。……本当だよ、将生は小毬のためにあの会社を設立して、メディアに取り上げられるくらい大きくしたんだ」

 お猪口に残っていた日本酒を飲み干し、詳しく話してくれた。

「父さんの会社に入ったら、重要なポストが用意されている。それを友達らは羨ましがったらしいけど、将生はその道に進まなかった。会社に入ったら、どこに行っても父さんの息子として見られる。それは配偶者も同じ。なにかと注目を集めて、時には嫌な思いをさせるかもしれない。だから将生は自分の力で会社を興したんだ」

 誠司君はお猪口を持つ手の力を強めた。