「じゃあこれから俺が小毬を想うように、小毬も俺を好きになって。……そのために俺、頑張るから」

「将生……」

 どうしよう、胸が苦しい。ただ、胸が苦しいだけじゃないの。奥のほうからギューッと締めつけられているような、なんとも言い表しがたい痛み。

「小毬、目……閉じて」

 そう囁くと、ゆっくりと近づく距離。

「待って、将生っ……!」

 彼の気持ちを聞いてしまった手前、これまでのように受け入れるわけにはいかないよ。だって私は将生のことが大嫌いで、なにより人を好きになる感情がわからないのだから。

 すぐに離れようとしたものの、すぐさま腰に腕が回り引き寄せられた。

「待たない。……いいよ、まだ俺のことを好きじゃなくても。だけどお願いだから今までのように拒まないでくれ」

 将生があまりに切なげに言うものだから、動けなくなる。

「小毬……」

 そして愛しそうに名前を呼ばれた瞬間、たまらなく恥ずかしくなり固く瞼を閉じた。

 少しして彼の唇が触れた瞬間、身体中が熱くなる。もう何度も将生とはキスをしているのに、まるで初めてした時のようなドキドキ感に包まれた。

 触れるだけのキスを落とすと、ゆっくりと離れていく唇。そのスピードに合わせるように目を開けると、少しでも動けば唇が触れそうな距離に将生の顔があって息を呑む。