かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「ありがとう、敬子。ちゃんと話してみる。それで私……」

「私のことは気にしないで。早く帰って旦那さんに伝えて」

「……ありがとう!」

 敬子に感謝をしてバッグを手に立ち上がり、せめてここは私が出そうと伝票に手を伸ばした時――。

「ここは俺が出すから」

「えっ……野沢君?」

 突然現れた野沢君に目を白黒させてしまう。それは敬子も同じでビックリしている。

 そんな私たちを見て、野沢君は得意げに言った。

「田澤から荻原とこの前、同期会やったところで飲んでいるってメッセージがきたからさ。驚かせてやろうと思って。……急用なんだろ? 早く行けよ」

「あ、うん。でもお会計は……」

 出してもらうわけにはいかないよ。

 だけど野沢君は伝票をポケットにしまってしまった。

「いいよ、荻原の代わりにこれから田澤と飲むから」

「えっ? 私と?」

 野沢君の話を聞いて、敬子は慌てふためく。

「あぁ、田澤も聞いたんだろ? 荻原の事情を。荻原の秘密を知る者同士、楽しく飲もうぜ」

「う、うん」