かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 それなのに、愛しそうに私を見つめる彼から目を逸らすことができない。

「結婚して小毬は俺の妻になったんだ。……もう我慢はしないから」

「……っ」

 なにそれ。もう我慢はしないなんて――。

「……そんなこと言われても、困る」

 ドキドキし過ぎてうまく言葉が出なくて、声が掠れてしまう。それでも至近距離にいる将生の耳にはしっかり届いたようで、顔をしかめた。

「どうして?」

「どうしてって……さっきも言ったでしょ? 私はずっと将生に嫌われていると思っていたから。だから急にそんなことを言われても頭がついていかない」

 いろいろと容量オーバーだ。

 すると将生は疑いめいた声で聞く。

「ちょっと待て。……じゃあ小毬は俺が小毬のことを好きじゃないのにキスをして、抱いたと思っているのか?」

「そうだよ。将生だって自分で言っていたじゃない、義務だって」

 すぐに答えると、彼は大きく目を見開いたあと、そのまま私の肩に頭を乗せた。
「ちょ、ちょっと将生!?」

 体重をかけられ、手にしていたビニール袋を落としてしまった。軽くよろめきながらもどうにか踏ん張って彼の名前を呼ぶと、深いため息を吐く。

「バカ小毬。……ただの照れ隠しだって気づけよ」

「照れ隠しって……! そんなの、気づけるわけないじゃない」

「どうして? 昔からずっと一緒にいた小毬なら気づけただろ?」

 間髪入れずに言われ、言葉に詰まる。