かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 バクバクと胸を高鳴らせながら答えを待つ。すると敬子は真っ直ぐに私を見つめた。

「聞かせて、全部。……聞きたい」

 敬子の答えを聞いて意を決し、野沢君に告白されたことを打ち明けた。

「そっか、やっぱりそうだったんだ」

「ごめん、すぐに話さなくて」

「私が小毬の立場でも話せなかったと思う。だから謝らないで。……それになんとなく気づいていたんだ、野沢君の気持ち」

「えっ?」

 どういうこと? 気づいていたって。

 気になってジッと見つめると、敬子は片眉を上げた。

「だてに何年も片想いしていないからね。気づいちゃうんだよね、好きな人のことになると、ちょっとした些細な変化でも。……でもあれは好きな人じゃなくてもバレバレだったかも。同期会の時、野沢君ってば私と話していても小毬のことばかりで、何度もチラチラと様子を見ていたから。小毬が急に帰ったと知ったら、慌てて追いかけていったし」

 敬子はビールを飲んで喉を潤おした。

「小毬は野沢君のことを好きじゃないってわかっていても、不安だった。私にとって野沢君は魅力的な人だから。それにふたり、入社式の時が初対面だったのに、いきなり打ち解けちゃっていたでしょ? ……小毬も野沢君のことを好きになっちゃったらどうしようって怖くてたまらなかった。だからあんな牽制するように野沢君のことを好きだって打ち明けたの」

「嫌なやつでしょ?」と言いながら、無理して笑う敬子に胸が痛む。

 少し前の私だったら、敬子の気持ちを理解できなかったかもしれない。でも今なら不安になる気持ちも、怖くなる気持ちもわかる。だからこんなにも胸が痛むんだ。