でも次第に私から離れていった。「住む世界が違う」と言われて。時には失恋した友達に、「いいよね、あんな人が婚約者で。私のこと、惨めだと思っているでしょ?」なんて心ない言葉を言われたこともあった。

 他人の目に、将生の婚約者としての私がどう映っていたのかわからない。でも私は、つらいことのほうが多かった。

 将生の婚約者というだけで、嫌な思いもたくさんした。我慢したことも多々ある。でも離れていった友達の目には、そう見えなかったのかもしれない。そう思うと敬子にも言えなかった。

「そうだよね、簡単にトラウマは消えないし、何度も経験しているからこそ怖いと思う。だけど、小毬はこの先もずっとトラウマを抱えて生きていくつもりなの?」

「えっ……?」

 すると由良は私の手を握り、真剣な瞳を向けた。

「小毬の気持ちも理解できるから言わなかったけど、いつまで結婚した事実を隠し通すつもりなの? 仕事を続けたいんだよね? 退職するまでずっと会社の人には秘密にしておくつもり?」

「それは……」