かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 決められていた結婚だったけれど、最終的に将生のプロポーズをされて、結婚を決めたのは私自身だから。

 気持ちをすべてぶつけると、将生は顔を伏せて拳をギュッと握りしめた。

「小毬は……ずっと俺が小毬のことを嫌いだと思っていたのか?」

 震える声で問うと、将生は少しずつ私との距離を縮めていく。

「俺は小毬のことを嫌いになったことなど、一度もない。結婚だってずっと望んでいたことだ」
「えっ……? 嘘、だって私聞いたよ? 将生が私のこと嫌いだって言っていたのを」

 もうずいぶんと昔のことなのに、今でも鮮明に覚えている。街中で出くわした際に聞いた彼の言葉を。

 それなのに将生は身に覚えがないと言うように首を捻った。

「俺が? いつ言ったんだ?」

 私の前で足を止めた将生に、あの日のことを伝える。

「言ったよ。中学三年生の時、将生が彼女とデートしていたところに出くわしちゃって……。その時、彼女に私との関係を聞かれた将生が『ただの同級生だけど、俺はあいつのこと嫌い』だってはっきりと言ってた」

 私の話を聞き思い出したのか、彼は小さく息を吐いた。

「たしかに言ったな」

「そうだよ、言ったよ」

 あの言葉がきっかけで、私の中で将生の存在が変わっていったんだから。

「言ったけど、あれは俺の本心じゃない」

「なに言って……」

「すべて小毬を守るためだったんだ」

 私の声に被せて言うと、真剣な瞳で続けた。