かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「なにやってるんだろう、私……」

 敬子は初対面にも関わらず気軽に声をかけてくれて、野沢君のことが好きだと打ち明けてくれた。それがすごく嬉しかったのに……。

 同期会の時に、敬子がどれほど野沢君のことが好きなのかわかった。だから野沢君に告白されて、偶然敬子と会った時にすごく後ろめたさがあった。

 友達だから、なんでも話したい。でも話すことによって友達ではいられなくなることもある。

 それを身を以て知っているからこそ余計に言えなかった。

 トボトボと重い足取りで駅へと向かい、電車に乗り込んだ。

 私、どうしたらいいんだろう。もうなにが正解でどう行動すればいいのか、全然わからない。

 流れる景色を茫然と眺めていると、気づいた時には降りるはずの駅を五駅も通り過ぎていた。

 慌てて電車から降りて駅名を見ると、ため息が漏れる。

「戻らないと」

 反対側のホームへ移動して電車の到着を待ちながら、敬子から連絡がきていないかスマホを見ると、新着メッセージありの文字が。

 ドキッとしながらタップすると、将生からだった。

 そうだよね、敬子からメッセージが届くはずないよね。

 確認すると、やはり今夜も遅くなるという内容だった。

【ごめん、今日も早く帰れそうにない。先に寝てていいから。夜食も大変だから準備しなくていいよ】

 メッセージを目で追っていく。