かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 違う、私だって敬子のこと友達だと思っている。でも、なにからどう説明したらいいの?

 それにやっぱり不安もある。友達なのに嘘をついていたのだから。結婚していることも、私が社長と副社長とは家族だということも話したら、敬子はどう思う?

 由良のように、変わらず接してくれると信じたい。……信じたいけれど、もし嫌われてしまったら? どうして最初から話してくれなかったの? って責められたら?

 あらゆる可能性を考えれば考えるほど、打ち明ける勇気が消えていく。

 そんな私に敬子は痺れを切らした。

「話してくれないなら、もういい」

「あっ……!」

 踵を返し走り去っていく敬子の背中を見つめるばかりで、今度は追いかけることができない。

 どうすることが正解だったのだろう。深く考えずに、すべて打ち明けるべきだった?

 だけど敬子が話を聞いてどう思うかなんてわからない。考えたくないけど、口外しないとは言い切れないし、敬子に話したことで誠司君やお義父さんに迷惑をかけることになったら……?

 考えれば考えるほど、答えがわからなくなる。……だけど敬子の表情や言われた言葉を思い出すと、泣きそうになった。