かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「昔から決められていたこの結婚をするために、私がたくさんのことを我慢して自由を奪われてきたように、将生もそうだったんでしょ？」

「なに、言って……」
　明らかに動揺する将生に、戸惑いを隠せない。だからこそちゃんと彼の真意を知りたい。

「これからは自分の人生を好きに生きたいと思っている。もちろん結婚したからには、浮気なんてしない。……ただこれまでの人生、進学先や結婚は自由に選択できなかったから、せめてこれからはすべて自分の好きなように選択して進んでいきたいの」

「小毬……」

　唖然とする将生に、思っていることをすべてぶつけていく。

「将生だって私との結婚が嫌だったから、他の子と付き合っていたんでしょ？　……私のことなんて嫌いだけど、仕方なく結婚したんだよね？　それなのに、どうして私を好きみたいに振る舞うの？　愛のない結婚をした私を憐れんで？」

　口が止まらず、皮肉めいた言葉が口をついて出た。でもそう思っちゃうよ。散々冷たく接してきたくせに、さっきみたいな態度を取られたら。
　表情を歪める彼を真っ直ぐに見つめた。

「将生が私のことを嫌いなことは、ずっと前から知っているから。……だから今さら私の機嫌を取るようなことをしなくていい」

　むしろ今までのように接してほしい。優しくされると戸惑うし、惨めな気持ちになる。